世界中が注目したギリシャの6月17日のやり直し総選挙では、緊縮財政の維持を訴えた新民主主義党(ND)が第1党となり、3党による連立政権が発足した。ユーロ圏からの離脱という最悪のシナリオは回避されそうだ。
ところが、南欧の景気はすでに火の車。ここにきて猛烈に火を噴き始めそうなのがスペインだ。ギリシャと同じく財政や金融機関に対する不安が急激にふくらみつつあるのだ。ギリシャと違うのは、ユーロ圏で第4位の経済規模を誇ること。本格的な危機に陥った場合、その影響はギリシャの比ではない。
ギリシャの選挙の翌日、スペイン国債は、価格が大幅に下落した(金利が跳ね上がった)。10年満期の利回りは、ユーロ導入後で最も高い7%を超えた。7%は、自力での政財再建が難しくなる「危険水域」とされる。
そもそも、スペインはどんな問題を抱えているのか。歴史を振り返ってみよう。
主な産業は観光業と農林水産業ぐらいで、かつては経済低迷とインフレに悩まされていた。しかし、1999年にユーロを導入したことが運命を劇的に変えた。
「ユーロの信用力を背景に金利が低下しました。借り入れしやすくなったことで資金が不動産市場に流れ込み、バブルとなったのです。しかし、リーマン・ショックでバブルがはじけ、金融機関が膨大な不良債権を抱えてしまいました」(第一生命経済研究所の田中理主席エコノミスト)
日本には、バブルがはじけても世界に誇る産業があった。しかし、経済的な体力に乏しいスペインは、単独では金融機関に公的資金を注入することができずに、とうとう欧州連合(EU)に助けを求めた。1~3月のスペインの完全失業率は24.4%。4人に1人が失業している状況だ。
「銀行に対する信用が薄れ、引き出したお金を置いておくための家庭用金庫が売れているそうです。預金流失は徐々に増えています」(あるエコノミスト)
※週刊朝日 2012年7月6日号