春休み以降も続く可能性が出てきた休校措置により、働く親たちからの悲鳴も聞かれる。
「夫婦でリモートワークしているが、勤務先は同業他社。機密を守るためウォークインクローゼットの中で仕事をしているメンバーがいる」
「正直、出社をしたいなという気持ちもある」
3月10日に都内で行われたテレワークのノウハウを共有する企業グループ「TDMテレワーク実行委員会」の勉強会では、自宅で子どもを見ながら働く親の、リアルな声が聞かれた。保育園などで働くママ友から頼まれ、自宅で友人の子を預かりながらテレワークしているという人もいた。
「集中する仕事は子どもが昼寝中、ルーティンワークは起きている間に、と棲み分けをしている」「子どもに『無視をしているのではなく、今は仕事をしているんだよ』と伝えるようにしている」など、さまざまな工夫が聞かれた。一方、「子どもに自分の仕事を理解してもらえる、いいきっかけになった」と、ポジティブな声も上がった。
かくいう記者(35歳・女性)も、今回1歳半の息子を自宅で見ながら、ビデオチャットなどで取材した。息子は記者の背中ごしにモニターを見つめ、意外に静かに過ごしてくれた。が、油断すると箸をくわえたまま走り回るやんちゃぶり。集中して原稿を書くのは昼寝中か寝静まった後に限られる。息子と過ごせることは幸せだが、睡魔と闘いながら原稿を書く時、ふと生産性に疑問を抱くこともある。
日本が長年抱えていた長時間労働と生産性という根深い問題。今回の危機を追い風に変え、解決に向かうきっかけにしたい。(ライター・市岡ひかり)
※AERA 2020年3月23日号より抜粋