「対面して相談を受けるときと同じでありたい。『死にたいんです』という人に、『死にたくなくなる三つのポイント』なんてまとめられないでしょう」

「一問一答」を始めて、YouTubeだからこそのよさにも気づいた。まず、相談者が本当の自分を、正直にさらけ出せること。次に、苦しみを「詳細に記述して送る」という作業を通して、苦しみが可視化され、自分で苦しみの原因に気づけること。苦しみには共通したパターンがあると知ることができること。

「そして、老若男女問わず、日本国内はもちろん海外の人も、苦悩に対する救いを仏教に求めているともわかりました」

 一問一答の回答待ち相談数は、現在1300件以上にのぼる。相談者は自分の相談への回答を待つ間、すでに配信されている動画を見る。そして、苦しんでいるのは自分だけではなく、ほかの人への説法が自分の苦しみにも響くことに気づくケースは少なくない。

「一対一での説法にはない可能性を、YouTubeは持っていると実感しています」

 現代人の寺離れが指摘されて久しい。20年後には、全国7万以上の仏教寺院のうち、3分の1は消滅するとも言われている。「スマホで説法」というとファンキーに聞こえるかもしれないが、苦しみを抱えている人に向け伝える機会を多く持ちたいと踏み出した新たな一歩だ。(ライター・羽根田真智)

AERA 2020年3月30日号

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