国立西洋美術館で開催される「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」(3月21日時点で開幕延期)のために、世界屈指の美術館であるロンドン・ナショナル・ギャラリーから、ゴッホの「ひまわり」がやってきた。ロンドンの「ひまわり」と同じモチーフの作品は、日本の「東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館」(4月からはSOMPO美術館)とアムステルダムの「ファン・ゴッホ美術館」に1点ずつ、計3点。そのうちの2点が日本に揃うこととなり、「ひまわり」のハシゴ鑑賞という贅沢も可能になる。AERA 2020年3月30日号では、ゴッホの「ひまわり」をめぐる背景や、鑑賞のポイントを取材した。
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「昨年1月、徹底的な科学的分析の結果、ファン・ゴッホ美術館は『ひまわり』を門外不出にしました。同じ経年褪色(たいしょく)や劣化が起こりうるので、他の美術館も『ひまわり』の貸し出しは控えるでしょう。その意味でも、今回のロンドン作品の貸し出しは、異例中の異例。今後2枚以上の『ひまわり』が同じ都市などに存在する可能性は、かなり少なくなったと言っていいですね」
ゴッホ研究で知られる大阪大学文学研究科教授の圀府寺(こうでら)司さんは、そう教えてくれた。そのハシゴ鑑賞の楽しみ方を紹介する前に、ロンドン、東京、アムステルダムにある、黄色を背景にした3枚の「ひまわり」について、おさらいしておこう。
資料や来歴の調査、科学的分析などによって、最初に描かれたのは、1888年8月、ロンドンの「ひまわり」だったことがわかっている。ゴーガンとのアルルでの共同生活を心待ちにしていたゴッホが、ゴーガンの部屋を飾るために描いたものだったという。時は夏の真っ盛り。本物のひまわりを見ながら描かれたのが黄色の背景に黄色の花が咲く、ゴッホ独特の「ひまわり」だ。
その3~4カ月後に描かれたとされているのが、東京の「ひまわり」となる。「東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館」(4月からはSOMPO美術館)の主任学芸員・小林晶子(しょうこ)さんは言う。