新型コロナウイルスの感染拡大に伴う経営環境の悪化を受け、契約社員やアルバイトなどの非正規労働者の雇用環境が厳しさを増している。2008年のリーマン・ショック後の不況で問題になった「派遣切り」のような大規模な解雇の再来が危惧されている。
「不況期になると、経営者は非正規の人たちを『雇用の調整弁』として扱う。コロナ禍の景気悪化で、すでに『雇い止め』などの事実上の解雇が始まっている」
インターネット上で加入できる労働組合「ジャパンユニオン」(東京)の菅野存執行委員長はこう語る。
ジャパンユニオンは2月24日、新型コロナウイルスに関する労働相談の専用窓口を設置、約1カ月で200件の相談が寄せられた。
例えば、「感染防止を名目に2週間無給で休むように言われた」(医療)など、事業を縮小させた会社側が、適切な対応策を示さずに非正規労働者を休ませるようなケースもある。
こうした措置は、会社の判断で労働者を休ませた場合、雇用主は休業手当として平均賃金の6割以上を払わなければならないと定めた労働基準法に抵触する可能性もある。
さらに、契約社員などの有期雇用の従業員について、契約更新せず、契約期間満了を理由に契約を終了させる「雇い止め」に関する相談も出始めた。契約期間満了を理由とする雇い止めは原則的に違法ではない。ただ、雇い止めの理由が不当な場合は無効になることもある。
非正規労働者たちが苦境に陥ったリーマン・ショックでは、派遣会社との契約を打ち切り、派遣労働者を事実上解雇する「派遣切り」が横行。職を失った非正規労働者らが、日比谷公園にテントを張った「年越し派遣村」で厳しい年越しを体験した。