「コンビニ百里の道をゆく」は、50歳のローソン社長、竹増貞信さんの連載です。経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづります。
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新型コロナウイルスによる肺炎で、3月29日にコメディアンの志村けんさんが亡くなりました。心よりご冥福をお祈り申し上げます。
スポーツ界でも国内外で感染された選手が出ています。WHOがパンデミック宣言を出したのは、2009年の新型インフルエンザ以来。このときも、球界でインフル禍が広がりました。誰のせいでもないこととはいえ、選手らの気持ちを思うと言葉が出ません。
こうしたニュースを見ていてふと思い出したのは、2月に亡くなられた、野村克也監督です。
09年のパンデミック宣言のときにも、選手やコーチ陣に感染者が続出。そんな中、旭川での楽天対日本ハム戦が雨によるグラウンド不良で中止に。当時野村監督は、「雨はやんでいる。(日ハムは)逃げた」と言いつつ、「インフルじゃ野球はできん」と独特のボヤキをこぼしたとか。
働いていると、部下や同僚にどんな言葉をかけていいか迷う瞬間が多々あります。ですが、野村監督には鷹揚とした雰囲気があり、「野村さんが言うなら仕方がないな」という感じがする。選手を叱るときも、相手の長所や欠点を見抜いたうえで、必ず良いところを伸ばして不足を補う。野村監督がいたからプロとして大成した選手も多いといわれています。
妻の沙知代さんとの馴れ初めも強烈です。海外育ちでお金持ちと聞いていた沙知代さんが、実は農家の娘だったと知ったのは結婚後。それを野村監督は、そこまでして自分と結婚したかったのだと解釈したと言います。失敗や嘘の背景を見ようとする人柄を感じるエピソードです。
野村監督の話を直接聞く機会はありませんでしたが、今の日本を見て、なんとボヤいたのか。そんなことを考えています。
※AERA 2020年4月13日号