感染拡大地域では学校再開が延期されるところもあるが、ほかも安全ではない。そもそも感染状況が正確に把握できているわけではなく、どの地域にも感染リスクはある。インターパーク倉持呼吸器内科院長の倉持仁さんは、学校の再開が感染拡大につながるのは間違いない、と警鐘を鳴らす。無症状感染者など、「感染しているか誰にもわからない」リスクがあるからだ。
「全体の感染者が増えれば、子どもにも死のリスクが及ぶ可能性はある。治療薬や検査体制が確立できるまで少なくとももう半年、各自治体すべて足並みをそろえて休校をやったほうが、効果もある。経済的ダメージへの補償は、国が速やかにお金を出してほしい。大事なのはまず、人の命なんですから」
その上で、再開の判断が自治体にゆだねられたことにも憤る。
「休校か再開かの判断を、国が自治体に投げてしまっている。じゃあ我々のことは誰が助けてくれるのか?という話です」
立命館大学教授の美馬達哉さん(医療社会学)は、国の要請が対象によって不公平になっていることに疑問を感じる。
「国の要請は、公平でなければなりません。コロナ対策で学校だけが対象になったのは不公平。学校を閉めておいて、塾や習いごとに子どもが集まっているのも矛盾です。逆に、社会全体で外出自粛が言われているこの最中であれば、学校の再開ありきで議論すべきではない。そこでまた子どもだけ自粛の対象から除外するのは、筋が通らないからです」
ちぐはぐな政府の対応。それは、学童保育と保育園が開かれていることにも表れていると、前出の野尻さんは指摘する。
「学校は休校。働く親が困るけれど、経済的補償もできないから保育園と学童は開ける。矛盾しています。感染リスクはおそらく、保育園や学童のほうが高い。学校とは比べ物にならないほど、密接した距離感ですから」
今後、臨時休校と再開を繰り返しながら収束をめざす道程が、長く続く可能性もあるだろう。国や自治体に求められるのは、「子どもへの説明」だ。
「休校も学校再開も、主人公は子どもです。子どもが納得できる説明が必要です」(美馬さん)
「子どもたちを蚊帳の外にせず、先々のシミュレーションを可能な限り、わかるように伝えること。急にまた休校となっても、『先生、一緒にがんばろう!』と子どもたちが言えるようにすることが重要です」(野尻さん)
(編集部・小長光哲郎)
※AERA 2020年4月13日号