先月19日、国立天文台と理化学研究所などの国際チームは、近年の太陽の磁場の観測から、太陽が休止期に入る可能性があると発表した。早稲田大学国際教養学部教授の池田清彦氏は、このニュースが日本で流れたことで原発推進の論理も破綻したと主張する。

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 アメリカあたりでは、近い将来地球が寒冷化するだろうとは大分前から言われていたが、このニュースは日本の大新聞に載ったところに意義がある。私を含めた少なからぬ数の科学者たちは、地球の過去の気温変動を考慮に入れて合理的に考える限り、太陽活動の強弱こそが地球の気温変動の主因だと主張してきたが、CO2主因説を信じて(信じるふりをして)金儲けをたくらむ利権集団(この中にはもちろん原発推進論者も含まれる)に騙されたマスコミは聞く耳を持たず、つい最近まで厳冬が続くのもCO2による温暖化のせいなどという妄言を報道していたのは周知のことである。

 CO2が増大し続けたら大変なことになると言って原発を推進してきた論理は今や完璧に破綻した。増大したCO2を減らす術は今のところないけれども、原発もまた、たとえ安全に動いたとしても、不可避的に生ずる高レベル放射性廃棄物をパックしたガラス固化体(1メートル以内に近づくと数十秒で致死量の放射線を浴びる)の数は、原発を動かし続ければ2030年には7万本に達するという。安全な放射線レベルに達するまで千年もかかるという膨大な数のガラス固化体をいったいどこに保管するつもりなのか。CO2の増大は寒冷化の予防に多少の役に立つが、ガラス固化体は危険なだけだ。

 環境省は未だにCO2を減らそうなどとアホなことを言っているようだけれども、脱原発を推進するのに今一番有効なのはガスタービンの火力発電所を新設することだ。1年もあれば建てられる。東電は鹿島火力発電所に80万kWのガスタービンを建設中で、今年の6月には完成するという。関西電力も原発の隣にガスタービン建てれば何の問題もないのにね。(※週刊朝日 2012年5月25日号)