道行く人とハイタッチをする謎の集団。この「ハイタッチ軍団」が全国に拡大中だという。実態を現地取材した。
4月中旬の日曜日。鹿児島市随一の繁華街・天文館に突如として「ピンクの集団」が現れた。集団は商店街のアーケードの中央に陣取り、道行く人に声をかけていく。「ハイタッチやってます! 一緒にやっていきませんか~?」
「鹿児島を笑顔にしましょう!」
商店街を通る買い物客や家族連れに手を差し伸べ、次々とハイタッチを求めていく。総勢40人以上。とにかく、ハイテンションだ。
その姿にギョッとして道を変える人、下を向きながら脇を走り去る人も少なくない。だが、戸惑いながらもハイタッチに応えるカップルや会社員も次第に増え、最後は笑顔になっていく。老紳士が、
「にぎやかで、いいですね」と、楽しそうにハイタッチをしていく場面もあった。
活動の発起人は、鹿児島市内の人材派遣会社に勤務する古賀亮子さん(38)だ。昨年10月から呼びかけを始め、活動を広げていった。
「フェイスブックなどで呼びかけたのですが、5人しか集まらない日もありました。でも、口コミで広がって、今では毎月2回、20~50人集まるまでになりました。若い参加者が多いですね。鹿児島は震災の被災地から遠いですが、だからこそ、彼らは身近で何かしたいと考えているのだと思います」
参加者の一人である田仲公作さん(30)はこう話す。
「今まで好きに生きてきたので、30歳になったらボランティアをやりたいと思っていました。人のために時間を使うことが気持ちいいと感じられるようになりました」
古賀さんは最後にこう語る。
「地域ごとにリーダーが出てきて、鹿児島全域、ひいては九州全体に笑顔が広がればいいですね」
日本人にはあまりなじみのない「ハイタッチ」。はたして、新たなムーブメントとなるか。
※週刊朝日 2012年5月25日号