ハワイにある、日本のすばる望遠鏡が今夏から新たな観測を始める。狙うのは見えない物質「暗黒物質」と見えないエネルギー「暗黒エネルギー」だ。この宇宙の「みえないもの」をどのように見つけるのか。東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構(KavliIPMU)の高田昌広・特任准教授に聞いた。
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この夏、すばるは生まれ変わる。10年かけて開発してきた新型カメラ「ハイパー・シュプリーム・カム」が設置されるからだ。
新型カメラが狙うのは狙うのはずばり、「見えない物質」と「見えないエネルギー」。それぞれ「暗黒物質」と「暗黒エネルギーと呼ばれる。
しかし、まったく「見えないもの」をどうやって見るのだろう。どれだけ高性能のカメラでも、写らなければ無意味ではないか。
「直接見るわけではありません。星空に隠れているところを、周囲から見つけてあぶり出すのです」
そう話すのは今回の観測で解析を担当する東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構(KavliIPMU)特任准教授の高田昌広さん(39)だ。
「まず最初に見つけなければいけないのが暗黒物質です。暗黒物質には重力がありますから」
ほとんど何も分かっていない暗黒エネルギーに比べて、暗黒物質からは、少なくとも重力が出ていることが分かっているからだ。相対論によれば、重力によって空間がゆがむと、光は曲がる。
「だから、手前に暗黒物質があると背景の星空がゆがむのです。透明のレンズ越しに見るように、背景にある無数の銀河の形がひしゃげて見えるわけです」
これが「重力レンズ効果」と呼ばれる現象だ。暗黒物質そのものは見えなくても、まるでその存在を指し示すかのように、周囲の銀河の形が暗黒物質を中心に円弧を描くようにゆがむ。その様子から、暗黒物質の"在りか"を推定できるのだという。
※週刊朝日 2012年5月4・11日号
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