尹美香氏らと共に「人権活動家」として戦い続けた李容洙さんがなぜ、記者会見を開いたのかは分からないが、性暴力被害者と支援者の関係は、時に緊張が走るものだとも思う。加害者への怒り、社会への絶望が、最も身近な人間関係を壊す力になることは珍しくない。実際、「慰安婦」女性たちがお金の使い道に対し支援団体を訴えた過去もある。壮絶な性暴力被害を受け、その後の沈黙と孤立が長いほど、不信と不安の根は深い。

 私は近年、女性支援者やソーシャルワーカーを取材する機会が多いが、穏やかな見た目の中高年女性たちの目の奥の鋭い光と、大きな声に動じない凄みにはっとさせられることがある。普通のおばちゃんたちが見ている絶望と、その絶望にのまれまいとする凄みなのだと思う。尹美香氏の優しい目の奥の真剣さも凄い。それは彼女が誰よりも被害女性たちに自ら出会い、声を聞き、共に泣いてきた人だからだ。2019年4月に始めた性暴力に抗議する「フラワーデモ」は、韓国の「慰安婦」運動に影響を受けた。尹美香氏の「声を聞く、声をつなぐ」運動がなければ思いつくこともなかっただろう。

 私の知る尹美香氏は大胆で、冷静で、そして韓流ドラマの主人公なみに意思の強い人だ。重い病を患ったときに治療費が足りず借金していた。本当に最低限の給料しかもらわずに働き続けてきた。印税が入っても全て寄付し、非常に厳しい倫理感で生きてきた。

 女性運動は大胆だ。その大胆さ故に、たたかれる時の圧力は凄まじい。それでも、日韓の国境を越えて、この誹謗中傷の嵐を共に乗り越えたい。韓国のフェミニストのこと、「慰安婦」女性たちのこと、日本の凄腕運動家のことも、この連載では時々書いていこうと思う。まさに連載タイトル「おんなの話はありがたい」……だ。

 そうそう、李容洙さんが記者会見でもう一人、強く批判していたことも記しておきたい。「アベシンゾウの顔もみたくない」と李容洙さんは言ったのだ。改めて考えたい。最も責任を問われ、カメラを向けられるべき人は誰なのか。

※コンゴ民主共和国(旧ザイール)の産婦人科医。紛争下で性暴力被害にあった女性たちの治療に尽力した。

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