全国に広まっている「コミュニティナース」を知っていますか。医療機関で仕事をする一般的な看護師とは異なり、地域に飛び出し、人々の暮らしに近いところで“健康的なまちづくり”をする人材をいいます。2016年から日本でその育成や普及のサポートなどの活動をしているのが、『Community Nurse Company株式会社』の代表取締役で看護師・保健師でもある矢田明子さん。新型コロナウイルスの影響で、新しいケアへの挑戦が始まっています。
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もともと海外に「コミュニティナーシング(地域看護)」という概念があることを知り、活動を始めた矢田さんは「病気になって初めて医療の専門家に会うのではなく、健康なときから日常のなかで接していたら、病気の早期発見などにつながります。コミュニティナースは、まちで健康につながる良いおせっかいを焼く人です」と話します。
矢田さんが関わる育成講座「コミュニティナースプロジェクト」をこれまでに受講した人の数は180人以上。修了生は現在、全国各地のさまざまな立場・環境で、多岐にわたった活動をしています。
コミュニティナースの先進地の一つが島根県雲南市です。「Community Nurse Company株式会社」や訪問看護ステーションなどに在籍する複数の公認コミュニティナースがいて、自治体も含め地域で連携してきました。それが結実したのが、コミュニティナースや助産師、郵便局などの地域連携グループ「地域おせっかい会議」です。2019年9月から活動を始め、現在は同市からの業務委託で活動しています。
「福祉などの制度ではどうしてもアプローチできない人たちがいるんですね。例えば、働き盛りで病院にはなかなか行かないような人たち。そういう人でも、郵便局やスーパーマーケットなどで働く“暮らしの動線にいる人”とは日常的に『最近どげかね?』と話せます。そんな“暮らしの動線にいる人”たちとチームになってお互いの得意ジャンルで連携し、さまざまな住民と接点を持てるよう活動しています」
「地域おせっかい会議」は、毎月の会議で気がかりなことや解決したいことを提案し合い、「来月までにこのおせっかいを実行していこう!」と活動するスタイル。例えば、2カ月に一度の年金支給日に郵便局へ記帳に来る高齢者が多いため、落語を聞いたり体の話をしたりする小さなイベントを開催。同会議メンバーである郵便局局長らが「記帳のついでに、お茶を飲んでいきませんか」とうながし、地域の住民の暮らしや健康に関する声やニーズを拾いました。