

人気恋愛リアリティー番組「テラスハウス」に出演していたプロレスラーの木村花さんの死が、大きな波紋を呼んでいる。SNSでの誹謗中傷に悩んでいたというが、実はこうしたリアリティーショーをめぐる問題は、日本だけで起こっているわけではない。AERA 2020年6月8日号から。
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ABEMA制作の恋愛リアリティーショーでプロデューサーを担当した経験もある、テレビマンユニオンの津田環さん(45)は言う。
「リアリティー番組でもそれ以外でも、視聴率やPVだけでなく、SNSやコメント欄をチェックすることは必須です。出演者への中傷があれば、本人や事務所にも伝えます。今は出演者のSNSを使って番組の宣伝もさせているわけで、あまりにひどい中傷は番組として対応する必要があります」
アメリカを拠点に活動する俳優でリアリティーショーに出演経験がある北村昭博さん(41)も、演出のあり方に疑問を呈す。
「ずっと視聴者から誹謗中傷が届いていたのなら、その止め方は作り手が考えなければいけません。カメラが入っている以上、出演者は作り手が求める自分を演じてしまう。それができなければ、次の面白い人に代わられてしまう存在だからです」
リアリティー番組の出演者が命を絶つのは、珍しいことではない。米国では2004年から16年までに少なくとも21人が自殺した。アメリカ在住の映画評論家の町山智浩さん(57)は言う。
「海外も含めると、これまでリアリティー番組の出演者のうち40人ほどが誹謗中傷などを苦に自殺していて、どれもSNSが普及したこの15年ほどの話です。そろそろ番組の作り方を変える必要があります」
海外には精神科医を雇い、出演者のメンタルケアを行う番組もある。だが、メンタルケアはコストがかかる一方で利益が出ないため、「日本企業では難しい」と町山さんは考える。
「だからこそ、魔法を解くことが必要です。どんな芝居にもカーテンコールがあるように、リアリティー番組も番組終了後に出演者がわだかまりなく仲良くしている舞台裏を見せたほうがいい。リアリティーショーではなくリアルを見せて、魔法を解くんです」