そして、かつての自民党ならば、森友・加計疑惑が生じたときに、実力者の誰か、いや何人もが、「安倍首相、それは間違っている」と忠告し、それを無視すれば、首相を辞任すべきだ、という声が強まっていたはずである。ところが、いずれの疑惑、そして桜を見る会という税金の私物化に対しても、自民党の国会議員からは、まったく声が出なかった。どの議員もが安倍首相のイエスマンになってしまっているのである。
だが、黒川弘務前東京高検検事長のスキャンダルで、国民の多くが、安倍首相に怒りを爆発させた。
安倍首相も森法相も、黒川氏の定年を延長させたとき、他に替えの利かない人物のように言い切った。明らかに憲法を無視した違法人事を、である。
しかし、賭けマージャンが露呈すると、あっさりと辞任を認めた。となると、1月の定年延長は、一部のマスメディアが報じたように、黒川氏を検事総長にすることで、さまざまなスキャンダルでの安倍首相に対する起訴を回避させようとした、としか捉えられなくなる。それがわかり、国民の怒りが爆発したわけだ。
国民の多くは、極端に言えば、安倍首相以外ならば誰が首相になってもよい、とさえ考え始めている。
※週刊朝日 2020年6月12日号