日野方式――そう呼ばれるほど、東京都日野市では独自の学校給食への取り組みが行われている。

 5年前から、日野市中央公民館は小学4年生から6年生を対象に「ひのっ子シェフコンテスト」という料理コンテストを開催している。児童たちは、日野市で育てられた野菜を使った給食メニューを考え、レシピを書いて応募する。メニューによっては自分の通う学校で出されることもあるのだ。

 3月5日、昨秋の同コンテストに応募した日野市平山小学校6年生の山下真依さん、田倉あみさんのアイデアが給食に採用された。メニューは「おから入りハンバーグ~野菜たっぷりあんかけ~」。おからを使ってヘルシーに仕上げ、きのこと野菜で秋らしい彩りを添えたところが特長だという。

 日野市では、1983年から地元の農家と協力し、地場の野菜を学校給食に取り入れることに力を入れてきた。前述のコンテストで「地元の野菜を使うこと」が応募条件になっているのも、こうした背景がある。

 日野市教育委員会学校課の職員で栄養士の丸裕子さんはこう話す。

「学童農園などで、農家の方たちと触れ合う機会を持たせることで、児童は『この野菜は○○さんが作ったんだ』と実感できるようになります。すると、『嫌いだから食べない』という反応から、一歩先の『残したら○○さんが悲しむかもしれない』という想像ができるようになる。これも給食を通してできる『食育』だと思うのです」

 給食は、食べることの「前」と「先」にある"思い"を、子供たちに教えてくれるのだ。

※週刊朝日 2012年4月6日号