「もしよろしかったら、簡単なお顔のマッサージも試していかれませんか?」と。
そこで「今月の特集」は「ストッキング」をテーマに記事を作成することにしました。周囲からは「ずいぶん地味なテーマだね」と言われましたが、店頭に立っていると、美容部員がストッキングに関して質問を受けることもあるのです。
同じお店の中ですから、お客様からしてみれば化粧品の販売員なのか、ストッキングの販売員なのかはわかりませんものね。そこでストッキングメーカーのひとに話を聞こうと思い、都内のストッキングメーカーを探しました。一企業の美容部員向けの冊子の取材に応対してもらうには、まずは丁寧な手紙が必要かと思ったので、メーカー宛てに手紙を書いてからアポイントを入れました。
そして取材を元にして「こういう職業のひとには◯◯デニールのストッキングがいい」といったものを一覧表にして特集記事をつくったのですが、これがびっくりするほどの大反響。
「なぜ、ストッキングの特集を思いつかれたのですか?」と、多くの美容部員に聞かれましたが、私の答えはひとつです。
「私も美容部員だったからよ」
現場に立っていたときの経験は、それから何年もたってから役に立つこともあるのです。
お若い方でたまに、本社勤務ではなく地方勤務になったことを嘆いたり、現場の仕事を早くはずれて管理職になりたい、肩書がほしいという方もいらっしゃいますが、人生に「無駄にしかならない経験」なんて、ひとつとしてないのです。
自分が経験していることというのは、いま「つまらない」と感じていても、覚えておくこと。自分の体の一部にしておくことです。
これも、理にかなった「生きる知恵」ではないかと思っています。
【しなやかに生きる知恵】
手がけてきたことは必ず“いま”の仕事にも生かせます