『ベビーシッター』『補助金』でGoogle検索をすると、トップ2件はキッズラインのサイトがヒットします(※6月12日正午時点)。
まだ事件のことを知らずに同社を利用する保護者は少なくないでしょう。それだけに、キッズラインは社長自らが表に出て記者会見を行うなど、きちんと説明責任を果たす必要があるのではないでしょうか。
――共働き世帯にとって、ベビーシッターは最後の「頼みの綱」であることも事実です。マッチングアプリは使い勝手がよく、値段も手ごろなので、これからも使い続けたいという親も少なくないと思います。その場合、子どもを安全に預けるために親が気をつけるべきことは何でしょうか。
治部 親が時間や労力という「コスト」をかけることだと思います。キッズライン社長がいう「シッター文化」が日本より根づいているアメリカで、共働き家庭の取材をしたことがあります。多くの親が自己責任で良いシッターを探し、多数回の面接をしたり、良い人材には高い時給を払ったりしていました。「シッター文化が根づく」というのは、子どもを安心して預けられる人を見抜くコストを払うことも含まれるわけです。
たとえば、どんなシッターであれ、最初は親が在宅して別の部屋でシッティングをしてもらって、子どもがなついているかを観察する。話せる月齢なら事後に子どもに感想を聞いてみる。外出時も2~3時間おきに、シッターに電話をかけて「どうですか」と様子を聞いてみる。親側が「気にかけている」ことをシッターに知らせ、常にアンテナを張っておくことが大事だと思います。また、あまりにも安い料金の場合も、相場価格はいくらなのか、安いシッターと高いシッターでは何が違うのかなどをきちんと調べたほうがいいでしょう。子どもを他人に安全に預けることは、安くお手軽にできることではありません。この事件を契機に、親側もそれを再認識すべきだと思います。
(構成=AERAdot.編集部・作田裕史)
●治部れんげ
1997年、一橋大学法学部卒。日経BP社にて経済誌記者。2006~07年、ミシガン大学フルブライト客員研究員。2014年よりフリージャーナリスト。2018年、一橋大学経営学修士課程修了。メディア・経営・教育とジェンダーやダイバーシティについて執筆。現在、昭和女子大学現代ビジネス研究所研究員。東京大学大学院情報学環客員研究員。日本政府主催の国際女性会議WAW!国内アドバイザー。東京都男女平等参画審議会委員(第5期)。豊島区男女平等参画審議会長。朝日新聞論壇委員。公益財団法人ジョイセフ理事。朝日新聞論壇委員。UN Women日本事務所による広告のバイアスをなくす「アンステレオタイプアライアンス日本支部」アドバイザー。著書に『炎上しない企業情報発信:ジェンダーはビジネスの新教養である』(日本経済新聞出版社)、『稼ぐ妻 育てる夫:夫婦の戦略的役割交換』(勁草書房)等。2児の母。
※本インタビュー後、昨年11月に発生した事件とは別に、キッズラインの男性登録シッターが5月中にわいせつ事件を起こし、被害届が出ていたことが報じられた(中野円佳「【独自】キッズライン、別のシッターによる性被害に証言。突然の男性活動停止の背景に」)。キッズラインは6月11日に「一部報道につきまして」と見解を発表し、事実を認めた。