左右の腎臓の上にちょこんとのっている、たった3グラムほどのチーズのような副腎という臓器をご存じだろうか。腎という漢字は付くものの、その働きはホルモンの分泌で、腎臓とはまったく別の臓器だ。
【イラストで見る】腎臓の上にちょこんとのっている、これが副腎
「いくら寝ても疲れがとれない、朝起きられない、体がだるくて重い……。こんな症状に心当たりがある人は、副腎が老化してホルモン分泌が低下している可能性があります」
こう話すのは、予防医学の専門家である銀座上符(うわぶ)メディカルクリニック院長の上符正志医師。副腎の老化がなぜ疲労などの諸症状に関係するのか。そこにかかわっているのが、ホルモンの存在だ。
副腎からはさまざまなホルモンが分泌されているが、その一つが抗ストレスホルモンと呼ばれるDHEAだ。健康長寿の人はDHEAの血中濃度が高いことから、「若返りホルモン」とも呼ばれている。
「DHEAの働きは、体脂肪の燃焼、筋肉強化、記憶力のサポート、ストレスの緩和、抗酸化作用、免疫力のアップ、性的欲求を高める……などさまざま。ところが、体内のDHEAの量を調べると、ピークは男女とも20代。60代になると男性はピーク時の3分の1、女性は5分の1まで減ってしまうのです」(上符医師)
何もしなければ加齢とともに減っていくDHEA。これに副腎の病的老化があると、さらに減少スピードが加速する。その原因となるのは、過剰なストレスだ。
私たちの体には、ストレスに対抗する力が備わっている。それがコルチゾールというホルモンの存在だ。コルチゾールはストレスがもたらす害から体を守ってくれるが、残念なことに分泌が過剰になると体を酸化させてしまう。つまり老化を進ませるわけだ。
この酸化を防ぐために作用するのがDHEAだ。
「ストレスが過剰になるとコルチゾールとDHEAを分泌している副腎はフル稼働しなければならず、その結果、副腎が疲労してDHEA分泌能力が衰えてしまう。これが副腎の病的老化です」(同)