年金資産約2千億円の9割を消失させたとされるAIJ投資顧問(以下、AIJ)。参考人招致を拒む同社の浅川和彦社長に対し、3月15日には衆議院財務金融委員会が出頭に強制力の伴う証人喚問を行う方針も示唆した。じわじわと、包囲網は狭まっている。

 そんな中、本誌が入手した同社の営業用"募集要項"に、その「詐欺的スキーム」の一端が表れていた。11年冬ごろに作成されたとみられる資料には、耳触りの良い文言が散見される。

〈高度な金融技術と豊富な経験を持ったプロフェッショナルを擁する国内独立系投資顧問会社〉〈さまざまなテクニックを駆使し、従来の伝統的手法では実現できないキャッシュフローのパターンを創造していきます〉

 資料を読んだあるベテランディーラーは、皮肉な笑みを浮かべ、こう語った。

「『デルタ・ニュートラル戦略』とか『ボラティリティ格差』とか業界用語を並べているが、中身は何もない。『とにかくうまくやります』と言っているだけで、プロなら絶対投資しない。相手が年金の"素人"だから騙せたわけだ」

 さらにこの資料では、AIJが独自開発したという「MI指数」なるものを、次のように大きく紹介している。

〈相場の過熱感(買われ過ぎ、売られ過ぎ)を測定する指標です〉〈「動極まれば静なり、静極まれば動なり」という格言がありますが、(中略)この格言を数値化して実践するものです〉

 前出のディーラーは語る。

「『MI指数』など初めて聞く。この手の指標はたくさんあるが、結局、大事なのは運用者の『相場観』。この募集要項を見ても、『それで、相場観がある人はいるの?』という疑問しかわかない。運用のプロなどいなかったんだろう」

※週刊朝日 2012年3月30日号