「女帝」の怒りが火を噴いた。北朝鮮は6月16日、2018年の韓国との首脳合意で北朝鮮側の開城(ケソン)に設置された南北共同連絡事務所を爆破した。
金正恩朝鮮労働党委員長を補佐する妹の金与正党第1副部長は、脱北者団体が体制批判のビラを散布したことに対し、脱北者を「人の価値もないクズ」などと激しく非難していた。だが、それは口実でしかない。
北朝鮮は、南北首脳会談で合意した開城工業団地、金剛山(クムガンサン)観光両事業などの南北経済協力事業が進められないことに不満を募らせていた。韓国としては国連制裁を無視して独自に経済協力を進めることはできない。だが、北朝鮮は堪忍袋の緒が切れたようだ。与正氏は南北首脳会談の合意よりも米韓同盟を優先しているとして、「(韓国当局の)執拗(しつよう)で慢性的な親米屈従主義が生んだ悲劇だ」と反発を強めている。
北朝鮮は前線に「第1号戦闘勤務体系」を発令し、開城や金剛山にも連隊級の部隊を派遣する。「対南事業を徹底して対敵事業に転換する」とも語った与正氏。次の標的は何か。
北朝鮮問題に詳しい韓国在住のジャーナリスト、裵淵弘(ペヨンホン)氏がこう語る。