北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。作家、女性のためのセックスグッズショップ「ラブピースクラブ」代表
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東京都知事選の候補者のポスターが貼られた掲示板
東京都知事選の候補者のポスターが貼られた掲示板

 作家・北原みのり氏の連載「おんなの話はありがたい」。今回は、コロナ禍3カ月の変化について。豊かで自由な人生を手にするために、大事なことが変わったという。

【写真】夜の暗がりで出合うと怖い?都知事選のポスター

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 やってみたら、そのあまりの快適さに生活が一変し、「いったいなぜ、これまで、できないと思っていたのかしら?」と過去の自分の思考回路を疑いたくなるような体験を、まさにテレワークで味わっている。

 私の会社には18人の社員がいる。店頭での販売などテレワークできない仕事もあるが、東京のスタッフは、緊急事態宣言を機に全員テレワークに切り替えた。

 それまでもテレワークという“概念”があることは分かっていたが、現実的ではないと思い込んでいた。かかってくる電話や、郵便物の受け取りなど物理的に事務所に人はいるべきだし、みんなで雑談したり、お昼を一緒にしたりしてコミュニケーションを取ることは大切だと信じていた。   

 ところがだ! そんなことはテレワークをしてみれば、どうでもいいことなのだった。電話をかけてくるビジネス相手は、今の時代ほとんどいなくなっていたし、郵便物を受け取るために、満員電車に乗る必要などなかった。お昼を一緒に食べなくても、日に2度のオンラインミーティングで十分に私たちは意思疎通ができるのだった。いやむしろ、会わない分だけ連絡や報告が丁寧になり、仕事がスムーズになっているくらいだ。

 スタッフの人生もそれぞれ変わった。新宿区のワンルームマンションで一人暮らしし、日々地獄の満員電車に体を緊張させ通勤していた一人のスタッフは、郊外の一軒家に引っ越した。今はパートナーと2匹と暮らし、休日は庭で野菜を育てるような生活をしている。さらに最近、生まれて初めて自分の車を買ったという。都内で車を持つことは考えもしなかったが、今はどこにでも車で行ける自由をかみしめているという。数カ月前には、全く考えていなかった人生の転換だ。

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「男は外・女は内」古いジェンダー観はテレワークに否定的