林:原さんがあれを読んだらすごくうれしかったと思いますよ。ここまで自分のことを理解してくれて、「そうなんですよ」と言ったと思う。
石井:そうおっしゃっていただいて、すごくうれしいです。
林:今度はどういうものを書こうと思ってらっしゃるんですか。
石井:次の作品はもう少し穏やかなものになると思います。水俣を撮ったユージン・スミスさんという写真家の奥さまだったアイリーンさんという方に、10年ぐらい前から聞き取りをしてるんですけど、アイリーンさんが語るユージン・スミスを書こうかなと思ってるんです。あと、女性の一代記みたいなものが私は昔から好きで、林さんもお好きですよね。
林:私も好きです。石井さんの好きな本を見てたら、宮尾登美子さんとか有吉佐和子さんとか、私の大好きな人が並んでましたよ。
石井:瀬戸内寂聴さんの女性評伝、山崎豊子さんの初期の作品とか……。
林:私も山崎豊子さんの大阪ものが好きなんです。『花のれん』とか大好き。
石井:いちばん若くしてこの路線にお進みになった林さんの評伝作品も大好きで、大学生のころ『ミカドの淑女』とか『女文士』とか夢中になって読みました。そのうち、山崎朋子さんや角田房子さんのノンフィクション作品を読むようになって、地道に記録を残すことなら私にもできるかなと思って。あと私、満州(中国東北部)に興味を持ってるんですけど、林さんのご両親は戦前、中国の張家口にいらっしゃったんですね。
林:はい、いました。
石井:うちの祖父も張家口にいました。すごく縁があるなと思って。私は日本で生まれてるんですけど、曽祖父は満鉄の最初の社員で、父も祖父も向こうで生まれてるんです。それで「満州」と「女性」という二つが気になるところなんです。
林:まあ、そうだったんですか。私、満州が昔から好きで、『RURIKO』を書いたときに新京に行きましたけど、街並みが素敵でした。私は戦前の満州に興味があって、資料はすごく集めてます。