延江浩(のぶえ・ひろし)/TFM「村上RADIO」ゼネラルプロデューサー (photo by K.KURIGAMI)
延江浩(のぶえ・ひろし)/TFM「村上RADIO」ゼネラルプロデューサー (photo by K.KURIGAMI)
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 TOKYO FMのラジオマン・延江浩さんが音楽とともに社会を語る、本誌連載「RADIO PA PA」。7月に閉館した岩波ホールの思い出を明かす。

【写真】瀬戸内寂聴さんが桐野さんに書いたサインがこちら

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 ジョージアは戦争と芸術の国。19世紀にはロシア帝政下、20世紀はソ連の共和国に、独立後も2008年にロシアが攻め入る。「侵略されながらも独自の民族文化を育んできた。その中心に映画があるのです」と岩波ホールOBで絵本作家のはらだたけひでさんは語る。「戦時下でも自由で人間性豊かな文化を刻んだ。私はそこに強く惹(ひ)かれるんです」

「ジョージア映画は特別であり、哲学的に軽妙で、洗練されていて、同時に子供のように純粋で無垢である」。これははらださん企画「ジョージア映画祭2022」で紹介されたフェリーニの言葉だ。

 ジョージアの名画を集め、古巣岩波ホールを皮切りに全国を巡回、同ホールでは4週間で延べ1万人の動員となった。楽日前日の22年2月24日にはロシアがウクライナへ侵攻し、以降、地方開催では広く関心を集めた。

「総支配人高野悦子さんが、アンジェイ・ワイダ監督作品に心血を注いだように、彼女はスタッフそれぞれが愛する作品を尊重してくれました」

 1968年の開館記念講演では野上彌生子さんが登壇、「神田の一郭のホールを学問、文化、芸術の可愛い小さいが、どこにもないような独特の花園に育てあげてもらいたい」(『岩波ホールと<映画の仲間>』)と語った。高野が提唱したエキプ・ド・シネマ運動は芸術的作品を長く上映するスタイルになった。

 早大村上春樹ライブラリーイベント後、桐野夏生さんと岩波ホールの話題になった。「閉館してしまったのよね。私も若い時に勤めていたから」

 そうなんですか、知りませんでしたと言うと、その場でスマホをスワイプして写真を見せてくれた。「瀬戸内(寂聴)さんがいらしたの。その時、サインして下さった」

 晴美時代の流麗な字で『烈しい生と 美しい死を 瀬戸内晴美』。

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