九州を中心に猛烈な雨が列島を襲った。しかし、なぜここまで被害が大きくなったのか。 一因に「浸水リスク」が高い土地での住宅開発が指摘される。
* * *
今回なぜ、ここまで被害が大きくなったのか。熊本県人吉市と球磨村では「タイムライン」(防災行動計画)を作成し、大雨の時に誰が何をしないといけないのか予行演習も行ってきた。
地域防災に詳しい山梨大学の秦(はだ)康範准教授は、被害が大きくなったポイントとして3点を挙げる。
「まず、短時間で水位が急上昇した点。今回2、3時間の間に、場所によっては1、2時間の間に球磨川の水位が急上昇しました。それも午前0時を回ってから。そのため、避難のタイミングが難しかったのではないかと思います」
気象庁が3日に発表した熊本県内の同日午後6時からの24時間の予想雨量は「多いところで200ミリ」。だが実際には、球磨村で470.5ミリ、人吉市で373.5ミリなど予想を大幅に上回る豪雨となった。
■長い年月で知恵を失う
2点目は、未明とはいえ、避難せず被害に遭った人がいたことも被害を大きくしたと見られている。
秦准教授は言う。
「水害常襲地帯では水害が起きることを前提に備えや街づくりをしているが、50年近く大水害が起きないと住んでいる人も安心してしまい、知恵も失われていたのではないか」
人吉市に住む会社員の男性(39)も避難しなかったが、理由をこう言う。
「1965年の大水害を知らない人も多く、毎年のように緊急事態速報は出ているけど球磨川は氾濫しそうで氾濫しない。今回も『危ない』と意識していた人はほとんどいなかったと思います」
3点目。秦准教授が被害が大きくなった要因として注目するのが、洪水浸水想定区域に増えている人口と世帯数だ。洪水浸水想定区域とは、国土交通省が「降雨で氾濫した場合に浸水する危険性が高い場所」と示した区域のことで、この降雨は「50~150年程度の計画規模の降雨」を想定している。