そこで人工膜(GTR膜)で壁を作り、歯と失われた歯槽骨の間のスペースを保っておきます。膜で覆われたスペースに歯肉は入ってくることができないため、その部分に歯根膜や歯槽骨など失われた歯周組織が再生されます。

【エムドゲイン】
 GTR法では膜を使いますが、エムドゲインを使用する方法では特殊なゲル状のタンパク質(歯周組織再生誘導材料、幼若ブタの歯胚から抽出したタンパク質の一種)を手術の際に露出した歯槽骨と歯根の表面に塗り、すき間を満たします。その後、歯肉を元通りにして縫合します。エムドゲインのタンパク質が歯根膜や歯槽骨の細胞に働きかけ、歯周組織が再生されます。

【リグロス】
 日本で開発され、2016年12月に販売が開始された歯周組織再生剤のリグロス(一般名・トラフェルミン)というゲル状の薬を使った治療法です。薬の主成分はヒトのタンパク質である「FGF-2(塩基性線維芽細胞増殖因子)」を人工的に生産したものです。薬効として「歯周組織の再生」が記載されていますが、「再生」の効能記載が認められた薬は医科を含めても世界初になります。

 FGF-2はからだの中で傷を治すときなどに放出される成長因子で、当初は皮膚にできる褥瘡(床ずれ)など治りにくい傷の治療薬として開発が進められていました。その後、骨の再生にも効果があることがわかったのです。具体的には骨の細胞や線維芽細胞、セメント芽細胞を活性化して歯槽骨や歯と歯肉を付着させる結合組織、セメント質の再生をうながす働きが確認されています。新しい血管を歯周組織に作ることで血液を通して栄養を送り込み、歯周組織の再生を助ける働きもあります。

 治療法は、エムドゲインと同じように、歯周外科治療時に露出した歯槽骨と歯根の表面に塗り、すき間を満たします。その後、歯肉を元通りに縫合します。

 歯周組織の再生は手術を受けた直後から始まります。歯周組織再生療法では、個人差はあるものの、概ね半年以上経過すると骨の再生が認められるようになります。ただし、GTR法は技術的にエムドゲインやリグロスを使用する方法よりも難しく、治療効果が歯科医師の技量や経験に左右されやすいといわれています。また、GTR法とリグロスは健康保険が適用されるのに対して、エムドゲインは自由診療になります。

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治療した歯の将来は?