(イラスト/渡辺裕子)
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 風邪などと違い、歯周病はよくなった後も引き続き定期的に「メインテナンスを受けるように」と言われます。「治ったはずなのになぜ?」と思う人も多いでしょう。これには歯周病が口の中の細菌による感染症である、という特性が深く関係しています。日本歯周病学会・日本臨床歯周病学会は、国民に歯周病について正しい情報を伝える公式本『続・日本人はこうして歯を失っていく』を発刊しました。本書から、歯周病のメインテナンスについて抜粋して届けします。

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 歯周病菌は口の中に棲みつく常在菌の一種で、一度、感染すると完全に排除することは難しく、セルフ・ケアにおいてはプラークコントロールで菌の数を減らすことがポイントになります。しかし、歯にはでこぼこがあり、歯と歯の間や歯と歯肉の間にはすき間があります。毎日の生活の中で完璧なブラッシングを継続することは難しく、こうした場所に少しずつプラークがたまっていきます。

 歯周病になった場所の歯は健康な歯に比べ歯肉が下がり気味だったり、歯と歯の間に大きなすき間があいたりしています。このような場所には普通以上に汚れがたまりやすく、セルフ・ケアはさらに難しくなります。

 また、進行した歯周病は中年以降に多く見られますが、その背景には加齢にともない細菌に対する抵抗力が落ちていることや、歯周病を悪化させるリスクである糖尿病などを抱える人が増えていることがあります。仕事や家庭で心理的ストレスを抱える人も多くなり、口の中のプラークがそれほど増えていなくても、歯周病が悪化しやすい条件が揃ってしまうのです。

 一度も歯周病を発症していない人と発症している人を比べた調査で、後者の人のほうが歯周病を再発しやすいという報告もあります。

 こうしたことからセルフ・ケアでは取りきれないプラークや歯石をプロの手を借りて取り除くこと、さらに、再発をしていないか、また新たな歯周病が発症していないかを確認するメインテナンスが大事になってくるわけです。

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よい状態が続いても最低6カ月に1回はメインテナンスを