夏にはきっと収まるのでは──根拠は薄弱でも春先にはそんな「希望」があった。だが、現実は違った。新型コロナウイルスの感染者は収束どころか爆増している。AERA 2020年8月10日-17日合併号で掲載された記事から。
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観客を入れたプロスポーツの再開、GoToキャンペーン強行による人波のシャッフル。日常を取り戻すためにアクセルを踏み込んだ車は、出入り口を間違えて高速道路の逆走を始めてしまったようだ。
感染の「エピセンター(震源地)」はもはや東京にとどまらない。名古屋、大阪、福岡という大都市圏で新規感染者が急増、感染者ゼロを継続していた岩手県の地図もついに塗り潰された。新型コロナウイルスの感染は猛スピードで拡散している。ブレーキはどこだ。
■トータル2分で2万円
4連休明けの7月27日の月曜日、都内在住の会社社長(57)は早朝から電車を乗り継いでPCR検査を実施している民間医療機関に向かった。自覚症状は皆無だが、1週間前に訪れた馴染みの居酒屋店主(70代)が感染して入院した、という報を2日前の土曜日に受けたからだ。インターネットで調べると、無症状の場合、概ね3万~4万円の自己負担が必要なクリニックばかりだったが、1回目のPCR検査に限って健康保険が適用される医院を見つけ、日曜日に受診することになった。
問診で、PCR検査の精度は4~7割程度なので同時に精度95%の抗体検査をする必要があると迫られ、そちらをすぐに実施。陰性だった。月曜日はPCR検査のために唾液を採取して提出し、翌日に医院からの電話でこちらも陰性が確認された。
「2日間トータルで2分ぐらいの診療時間で、コミコミで2万円でした。こんな検査なら自宅で唾液を取って検査機関に送った方が早いし安く済むでしょう。あれだけ政府が自粛を求めながら、無症状者のPCR検査に自己負担を強いるのはおかしい。収入の少ない若者ならなおのこと、検査に消極的になるのも致し方ない」