今もまだ残る古き良き店を訪ねる連載「昭和な名店」。今回は根津の「芋甚」。
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1912年、初代の山田甚蔵が焼き芋屋として創業した「芋甚」。昭和の初めに2代目がミルクホールを開き、当時としてはめずらしい自家製アイスを提供するようになる。卵を使わず、粉ミルクと練乳を合わせたやさしい甘さのバニラはいまも人気だ。小豆たっぷりの小倉と並べて「アベックアイス」として提供したり、かき氷にものせられる。
戦前から提供するというかき氷は、種類豊富で選ぶのも迷うほど。なかでもいちごやメロン味の自家製シロップを使ったかき氷に懐かしさを感じる。器の底にシロップを入れてから、氷を削るやり方も昔と変わらない。
「おやじから、氷の下にシロップを入れるのが下町流と教えられました」と話す4代目の博康さん。シャリシャリと削られた氷にすっきりとした甘さのシロップが混ざって後味さわやか。ボリュームもほどよく、下町価格なのもうれしい。かき氷はカップ入りの持ち帰り用もあるので、谷根千散策の途中に涼を求めて立ち寄りたい。
(取材・文/沖村かなみ)
「芋甚」東京都文京区根津2‐30‐4/営業時間:11:00~18:40L.O./定休日:月曜(10~3月は月、火)
※週刊朝日 2020年8月14日-21日合併号