人生で最も費用対効果が高い節約術は、「生前整理」かもしれない。生前整理とは、生きているうちに自分の死や老いに備え、不用品を整理したり、資産状況などを把握し、自分の意志がハッキリしているうちに、大切な人に思いを伝えたりしておくこと。
静岡県の興津朝子さん(51歳、仮名)は、母を亡くしたときの経験から、自分の生前整理はもちろん、義両親の生前整理も早めに進めておくことを夫に提案していた。しかし、生前整理にともなう手続きを嫌がる義母により、苦戦を強いられる……。興津さんの事例をもとに、生前整理の本質について考えたい。
■母が急逝
興津さんの母は、2012年にくも膜下出血のため、69歳で急逝した。あまりに急なことだったため、興津さんは健康保険証やクレジットカード、保険証券などの保管場所がわからず、父とともに実家じゅうを捜すことに……。葬儀が終わってからは、母名義の土地を父に変更する手続きに奔走し、悲しみを癒やす暇もなかった。
「母は書類などの整理や管理が下手だったんです。健康保険証やクレジットカード、母が管理していた保険証券などは、最終的には見つかりましたが、整理ができていなかったことと、父の知らない間に入っていた保険が多かったため、母名義の保険を探すのもひと苦労で、手続きに手間取りました」
興津さんの母は人から頼まれたら断れない性格で、義理でいくつもの保険に加入していたようだ。興津さんは探し出した保険証券や手がかりとなる書類を整理し、保険会社に勤めている知人に預けて詳しく調べてもらった。
すると、証券は紛失しているが、母名義で加入している生命保険が2件見つかる。興津さんは必要書類をそろえ、保険証券の再発行手続きを経て、無事に保険金を受け取ることができた。この経験をきっかけに、興津さんは生前整理の重要性を思い知った。
■夫の祖母が遺した土地
それから6年後の18年、義母と外出していると、ある場所に差し掛かったとき、「ここはお祖母ちゃんの土地なのよね」と義母が独り言のように口にする。不安になった興津さんは、夫からその土地について義母に聞いてもらうと、夫の父方の祖母は1997年に亡くなっているにもかかわらず、20年以上も祖母名義のままになっていることが判明。