興津さんは、母の死後に大変な思いをした経験から、夫の祖母の土地の名義変更を進言した。

 夫が「父さんのことなんだから」と、義父に自分で手続きをするよう言ったところ、義父はこれを快諾。「相続人を集めて話し合おう」ということになった。しかし、義父はいっこうに行動に移さない。なぜなら、「面倒なことはやりたくない」という義母が裏で義父を操っていたためだった。

「私たち夫婦には子どもがいません。そのため義母は、『うちは、継ぐ孫もいないのに、なんでそんなことを今さらやらなきゃならないの? 私の友だちは、後継者がいない土地は市が引き取ってくれると言っていたのに、そんな面倒なことをわざわざやる必要あるの?』と再三ごねたのです。結局、説得するのに1年以上かかりました」

「後継者がいない土地を市が引き取ってくれる」というのは間違いだ。正しくは、相続人のいない財産は最終的に国庫に帰属することとなる。

「相続人のいない財産は最終的には国のものになるのですが、それは相続人が誰もいなくなり、『税金を納める人がいなくなった場合』だと市役所で聞きました。1人でも相続人が見つかれば、その人のところへ固定資産税などの税金の納付書が届きます。今回の土地の場合、義両親の甥やその子どもたちに納付書が送られることになります」

 義両親は数人の甥やその子どもたちを可愛がっていた。興津さんは、なかなか首を縦に振らない義両親を前に言った。

「今、可愛がっている甥っ子が将来、あなたたちがこの土地の相続手続きをきちんとしていなかったことを知ったらどう思うでしょうか? きっと恨むでしょうね。お墓参りをしてくれないかもしれませんよ」

 ようやくこの言葉で義父は「きちんとせにゃならんな」とつぶやいたが、義母はまだ嫌がっていた。義母は、「私は嫁に来たんだから、私のきょうだいの子どもたちにまで納付書が行くはずがない!」と反論。興津さんは冷静に義母に言った。

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興津さんが義母に放った一言