「コンビニ百里の道をゆく」は、50歳のローソン社長、竹増貞信さんの連載です。経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづります。
【写真】ローソン店舗に商品を配送するトラック。実験では共同のトラックを使用しました
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コンビニにとって、物流は要の一つです。全国各地の店舗へ商品を供給するには、物流網の維持が不可欠です。ローソンでは、これまでもデジタルデバイスを導入するなど、時代に合わせた在り方を模索してきました。
物流を良くしたいという思いはコンビニ各社同じです。そこで、東京都内のローソン、セブン-イレブン、ファミリーマートの40店舗で先日、商品の共同配送の実験をしました。まず、各社のセンターから江東区の共同物流センターへ商品を輸送。そこからは各社の商品を同じトラックに載せて、近接する店舗へ届けました。
もともと契機となったのは、東京オリンピック・パラリンピックでした。訪日する外国の方々に日本のコンビニの良さを知っていただける絶好の機会です。充実した品ぞろえでお迎えしたいと思う一方、五輪による交通量の増加で物流が滞ってしまうという予測もありました。ならば、チェーンを問わず、同じトラックで配送してみてはどうか。経済産業省からそんな声が上がり、実験が始まりました。
これまで3社はライバルとして切磋琢磨はしても、何かに一緒に取り組むことはほとんどありませんでしたが、持続可能な社会を作るには手を取り合うことも必要です。トラックの本数が減れば、二酸化炭素排出量の削減などSDGsの目標達成にもつながります。共同配送をきっかけに、非競争領域という考え方が生み出されたと感じています。
交通サービスの領域では、電車やバスからタクシー、レンタサイクルまでを結びつけ、スムーズな移動を実現するMaaS(マース)と呼ばれるシステムも注目されています。こうした社会の変化や流れを押さえつつ、コンビニ業界自身も変化していかなければいけません。今回の実験をしっかり今後につなげて、新しいコンビニ物流の在り方を検討、実現していきたいと思っています。
竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長
※AERA 2020年8月31日号