「世界3大投資家」の一人とされるジム・ロジャーズ氏の本誌連載「世界3大投資家 ジム・ロジャーズがズバリ予言 2020年、お金と世界はこう動く」。今回は、東京五輪・パラリンピックついて。
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新型コロナウイルスの影響で2021年夏に延期された東京五輪・パラリンピックの開催が、再び危ぶまれている。
開催しても観客が集まらない、そもそも各国で選考大会も開けない状況で、代表選手も日本に来ることができない。そんな心配があるのは当然だ。
だが、私が日本のリーダーなら東京五輪を予定どおり開催するだろう。それは、歴史をひもとけばわかることだからだ。
1980年代の五輪を思い出してほしい。東西冷戦下にあった80年のモスクワ五輪では、米国や日本など西側諸国は集団ボイコットをした。84年のロサンゼルス五輪では、今度はソ連や東ドイツなど東側諸国が参加しなかった。
二つの大会は、国際政治の影響を受けて選手や観客を十分に集めることはできなかった。それでも、規模を縮小しながら五輪は開催された。
もちろん、東京五輪を開催することのリスクはある。コロナによって人々の不安が高まり、ヒステリックな心理が蔓延している今の状況では、通常どおりの開催は難しい。それでも前へ進もうとすることが大切だ。
この危機をチャンスとして生かさなければならない。なぜか。人は、危機を乗り越えようとすることで前に進む。五輪を開催すれば、人々は念入りに準備し、現在の状況に適応できるようになる。
開催すれば感染症の発生などいろんな問題も起きるだろう。だが、それで「大会は失敗に終わった」とはならない。最高レベルの成功は難しくても、今から入念に準備をすることでリスクを下げ、失敗を最小限に抑えることができるはずだ。
仮に東京五輪が中止になったらどうなるか。
日本は、東京五輪に1兆円を超える投資をした。新しいスタジアムも建設した。民間では、東京にホテルを建てた企業もある。これらの投資は、大会が開催されなければ多額の損失となる。