主演映画「窮鼠(きゅうそ)チーズの夢を見る」の公開を控えた大倉忠義さんがAERAに登場。アイドル、そして俳優として確実にキャリアを積む大倉さんが現在の活動にかける思いを語った。AERA 2020年9月7日号から。
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撮影スタジオに流れる音楽のリズムに合わせ、軽やかに身体を揺らす。朝から何本もの取材を受けてきたというが、疲れを見せることなく、爽やかな笑顔でカメラに向かった。
関ジャニ∞でドラムを担当し、ドラマや映画、舞台で俳優としても活躍する。質問に対し、落ち着いた口調で静かに語る姿は、主演映画「窮鼠はチーズの夢を見る」で演じた大伴恭一と重なる。学生時代から知る今ヶ瀬渉(成田凌)から思いを寄せられ、初めは煙たがるも次第に惹かれていく。つかみどころのなさが魅力であり、心のなかが読めないからこそ誰もが恭一に吸い寄せられていく。
「何を考えているのかわからないですよね。虚栄心だったり、プライドだったりを無理に隠そうとしているんじゃないか、とも感じました。実は他人からよく見られたいと思っている人なのかもしれないですよね」
男性同士の恋愛を描いた作品は、大倉の俳優としてのキャリアのなかでも強い印象を残す。完成した作品を観たときはどう感じたのか。そう尋ねると、はにかんだ笑顔を見せた。
「自分の出ているシーンが多いので、客観視ができなかったです。出演した作品を観るといつも『これでいいのかわからないなー』という気持ちになります」
少しだけ熱っぽく語ったのは、年齢ごとに演じられる役が異なる、という話題に及んだときだ。もし20代で恭一を演じていたら、奥行きのない人物像になっていただろう、と。
「仕事でもプライベートでも、20代で経験したことは自分の人生にとって大きなことばかりでした。それらがすべてつながったいまだからこそ、この役を演じることができたのだと思います」
(ライター・古谷ゆう子)
※AERA 2020年9月7日号