さらに安倍首相に期待したかったのは、日米地位協定の改定である。日米地位協定は占領政策の延長で、イタリアもフィリピンもドイツも対米地位協定を改定しているが、日本は改定できていない。このしわ寄せが沖縄問題である。
国土面積の0・6%しかない沖縄に米軍基地の70%がある。むちゃくちゃである。
去年の春、安倍首相に「あなたの最大のレガシーになるのは日米地位協定の改定だ。やるべきだ」と言った。すると安倍首相は「やります」と言った。
ところが、コロナ禍が起きた。ついに道半ばで実現できないまま終わり、極めて残念である。
もう一つ、安倍内閣の問題は、自民党の国会議員が皆、安倍首相のイエスマンになっていたことである。森友・加計疑惑が起きても「安倍首相は辞めるべきだ」の声が出なかった。だからというべきか、その後スキャンダルが連発した。政治に緊張感がないことが一番の問題であり、これは政権の長期化による弊害である。
いろんな問題がありながら、国政選挙で自民党は6連勝した。野党が弱すぎることもあるが、これは国民の多くが安倍内閣を認めていたということで、これほど連勝する政権は先進国で他にない。皮肉を込めて言えば、もっとも安定していた政権だと言えるのである。
※週刊朝日 2020年9月11日号
■田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数