新型コロナ感染拡大の影響により、この春は多くの美術館や博物館が臨時休館となった。現在は感染症対策をとりながら再開しているが、大量動員型の展覧会はしばらく難しい。Withコロナ時代の美術館・博物館の在り方はどのように変化していくのだろうか。森美術館館長の片岡真実氏と国立科学博物館館長の林良博氏の話をもとに構成した。
5つの研究部門が連携、研究内容を俯瞰できた
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森美術館と国立科学博物館はともに、2月29日から異例の長期臨時休館に入った。企画展も常設展も実施されず、がらんとした会場は「空白の期間」にも思えたが、実は美術館や博物館にとって、メリットもあった。研究業務の強化および再評価である。
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片岡:4月下旬に開幕予定だった「STARS展:現代美術のスターたち―日本から世界へ」の準備期間が延びたことで、アーカイブコーナーの展示やカタログの編集等に時間をかけることができました。加えて、デジタルメディア上で展開する新しいプログラムも始めました。新しいリサーチや連絡調整業務は発生したものの、美術館の責務のひとつでもある「研究業務」が強化できました。
林:科博は主に展示および学習支援をする上野と附属自然教育園(港区白金台)、研究組織がある筑波の3拠点に分かれているのですが、特に筑波へ長距離通勤していた研究員は在宅勤務となったことで、長期的な調査計画を立てたり、今までの調査結果を見直すことで新たな発見をしたりすることができました。研究員は通常、調査研究のためにさまざまな場所へ赴くのですが、これを機にたまっていた標本も整理できたようです(笑)。
また5つある研究部門同士で、コミュニケーションをする時間をもつことができました。普段は現地調査に追われがちなのですが、自分の研究内容を俯瞰して見るためには横のつながりが必要。研究において「客観化する」というのは非常に重要なことなんですね。
科博は2年ほど前から、ミャンマーで本格的な調査研究を始めており、JICAと一緒に展示場を作ったり、研究者を育成したりしているのですが、やはりここでも現地の方々と横のつながりを持って共同研究を進めています。今はお互いに行き来できない状況にもかかわらず、時間の余裕を持てたことで、今回は共同研究をさらに深めることができたのではないかと思っています。