自民党総裁選挙をめぐる世論調査で、菅官房長官が首位に立った。立憲民主党と国民民主党の合流の動きもにらみ、永田町には解散風が吹き出した。AERA 2020年9月14日号の記事を紹介する。
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「党員置き去りと批判噴出の総裁選も、ここまで計算通りにピシッと決まれば、石破だろうが進次郎だろうが、誰も文句は言えない。菅総理で決まりじゃないですか」
まだ当確も出ていない自民党総裁選挙を前に、高笑いが止まらない様子のある自民党幹部は、この一連のシナリオを描いた二階俊博幹事長の側近だ。
■小学生でもできる計算
この議員は、安倍首相が電撃辞任を発表して1週間後の「誰が次の首相にふさわしいか」という朝日新聞の世論調査で、6月にはわずか「3%」と振るわなかった菅義偉官房長官を、「38%」に押し上げた二階氏の老練な策士ぶりを絶賛する。実際、総裁選への出馬を表明している3人の中で、2位の石破茂氏「25%」を抑えダントツの首位にしてみせたのだ。結局、菅新総裁の誕生の肝は「派閥」と「院政」だったと、この議員は断言する。
「党員投票を入れた総裁選をやれば、国会議員票と同数の票が配分される党員票の多くを石破さんに持っていかれて勝敗は分からなくなる。だが、『党員投票なし』と決まれば、あとは派閥の調整だけ。最大派閥の細田、続く麻生、竹下の各派閥が決まれば、だれが総裁になるか小学生でもできる計算。それに『次は菅さんで』という安倍首相のお墨付きもあるから支持は盤石ですよ。久しぶりに自民党らしい阿吽(あうん)の呼吸でしたね」
菅陣営にしてみれば当初「3%」という数字は衝撃だったようだ。「総裁選に仮に勝っても総選挙は絶対にない」。早期の秋解散には終始、消極的だった。ところが、支持率が「35ポイント」も上昇し、総理の座への道標が現実のものになった今、「すぐにでも解散を打つべし」と色めき立っている。ただし「菅政権は長続きしない」という声は、菅氏を推した派閥所属の議員からも聞こえてくる。