地上波のテレビ・ラジオから韓流ドラマや韓流番組が消えた2014年ごろには、ああこのままでは韓流は地下組織化するのでは、と不安にかられたが……今やどうだろう。生まれた時から韓流とともに育った世代がいて、韓流があるのが当たり前の日常がある。韓国の芸能界に憧れる若い世代がいる。映画や音楽の世界でも、今や韓流が国際的に求められるようになっている。その様子はまさに韓流の世界をリアルが再現しているように見える。ゲスと不正義は、誠実な歩みによって駆逐されるのだ。


 
 もちろんいくら韓流が盛り上がっても、日本政府が率先して歴史を忘却し、嫌韓の空気を放置してきたことで日本社会に刻まれた傷は深い。日本の植民地支配の残酷な爪痕抜きに「愛の不時着」はなかったように、私たちがなぜこれほど隣国の歴史(それはもうそのまま日本の近代史でもあるのに)に無関心でいられたのか、安倍政権の末期に巻き起こる再びの韓流ブームとともに、向き合う必要があるのかもしれない。
 
 歴史だけではない、フェミニズムもそうだ。韓流にはまる女性たちが口をそろえて言うことがある。「なぜ、韓国のドラマは、こんなにも男女が対等に描かれるのだろう」

 韓国には女性家族省が優れた番組に与える「両性平等放送賞」というのがある。性暴力や性売買問題などが取り上げられたり、男女平等な社会思考をしたりする番組に賞が与えられる。賞だけが理由ではないが、男性を癒やし、世話する「女子力」がドラマのテーマになるような日本とは、ジェンダーに関してもずっと先の世界を見せてくれるから、女性にとっては、韓流ドラマはストレスなく、自分ごととして楽しめるのだ。

 安倍政権的なものはまだまだ自民党内でくすぶり続けそうだけれど、民主主義も、ジェンダー平等も日本の先を行く韓流を見習いながら、日韓がつながる道をもっと広げていきたい。

北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。作家、女性のためのセックスグッズショップ「ラブピースクラブ」代表

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