林:「風博士」も見ました。しかしこのコロナで舞台の方は大変だったみたいですね。

趣里:中止になった方々は、精神的にもけっこう大変だったと思います。私たちの仕事って本当に必要なのかなと思ったり、一方で誰か一人でも「見てよかった」と思ってくれる人がいたら、やる意味があるのかなと思ったりしました。でも結局「頑張ろう」という気持ちになりました。

林:私、このところ立て続けに歌舞伎を見に行ってるんですけど、客席が半分だから、皆さん「拍手を2倍します」という感じで、けっこう感動的で、一緒に行った人なんか泣いてましたよ。今度の「わたしの耳」も客席は半分にするんですか。

趣里:半分以下なんです。新国立劇場の小劇場なんですけど、普段は400人ぐらい入れるのが、今回は半分以下なんです。

林:ますますチケットが取れないですね。シス・カンパニーの公演って、みんなずっと行列して当日券を買うぐらいの人気だから。

趣里:でも、配信があるそうです。1日だけ。

林:芝居好きな人は、配信じゃ見た気がしないと思うな。

趣里:ですよね。生の良さっていうのは、やっぱりありますもんね。

林:シス・カンパニー代表の北村明子さんって素敵な方ですよね。元女優さんで。

趣里:すごく素敵な方です。私、バレエをしているときからシスさんの舞台を見に行っていたんです。そのときは、「絶対、女優さんなんかやっちゃダメよ」って北村さんに言われて、その後、お芝居を始めてからお会いしたときには、「やるならやんなさい。やんなきゃダメ」と背中を押していただいて、励まされました。

林:北村さんにもここに出ていただきましたが、「理想の劇場が自分の頭の中にあって、誰と誰にこういう役で出てもらって……と考えるのがいちばん至福のときだ」とおっしゃってました。今度のお芝居も、コロナのあいだ北村さんの頭の中に劇場があって、その中に趣里さんがいたんですよ。

趣里:うれしいです。北村さんのシス・カンパニーの舞台に出るというのが目標で、私は「アルカディア」(2016年)が初めてのシス公演だったんです。今回で4本目なんです。

林:私、趣里さんを初めて拝見したのが、その「アルカディア」だったんですよ。

趣里:えっ、そうなんですか?

林:趣里さんが部屋の中に飛び込んできて、相手役の男の人とちょっともつれるような感じになる場面がすごく鮮烈で、一緒に見てた中井美穂さんに「この女優さん、いいね」と言ったら、中井さんが「水谷豊さんと伊藤蘭さんのお嬢さんよ」って言って、それで初めて知ったんです。ご両親のお名前を出さずに、ご自分の力で活躍してらしてすごいなと思って、それ以来ずっと注目してたんです。趣里さんがあのスターのお子さんだってことを知らない人、いっぱいいると思う。

趣里:私、林さんが私を知ってくださっていたというのにびっくりで、うれしいです。

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