「ゴーッという風の音が……」
と表現し、「ヒィー ヒィー」とは言わない。
伊勢湾台風のときの風の音は、最高音の「ヒィー ヒィー」という女の悲鳴に似ていた。
台風一〇号の音を聞いてこれはただならぬもようだと納得できた。
それにしても被害が最小限に抑えられてよかった。その裏には多くの試行錯誤の積み重ねがあったと思う。
実際のところ、台風の正確な位置をとらえるのはむずかしいという。しかも台風は遠く離れたところにも大きな影響を及ぼす。
私のカンと経験によれば、つねに台風本体の方が予報より早く来る。気象観測して伝える段階でどうしても後追いになり、遅れてしまう。早め早めに行動しておかないと間に合わない。
※週刊朝日 2020年9月25日号
■下重暁子(しもじゅう・あきこ)/作家。早稲田大学教育学部国語国文学科卒業後、NHKに入局。民放キャスターを経て、文筆活動に入る。主な著書に『家族という病』『極上の孤独』『年齢は捨てなさい』ほか多数
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