私の手拭いの柄は、いわゆる『豆絞り』の豆がホンモノの大豆のカタチをしていて、縦横に並んだ沢山のその豆の中に、わずかに芽の出ているものがある……というもの。敷き詰められた豆を切り抜いた型紙を見ていると「よくこんな細かい仕事が出来るな」とホトホト感心します。

 職人の地道な手仕事です。その型紙を元に木綿を染めていくのもまた職人。木綿物をこさえるのも職人でしょう。綿花を育てるのも職人みたいなもんだ。花を紡ぐのは機械かもしれないけど、それを操作するのは職人といっていい。

 職人さんの地道な仕事の結晶である手拭いを正月携えて、方々へ挨拶に回って御贔屓を願うなんて、なかなか落語家も地道な商売です。今年は入門志願者も少ないようで、後継者がいなくなることはないにしても先行き不安ですな。染め屋さんは尚更です。

 しかしまぁ、一番地道でなきゃならない方がIR推進なんて、なんだかなぁ……ですよ。ねぇ、菅さん……にホントに決まったのかな?

春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/1978年、千葉県生まれ。落語家。2001年、日本大学芸術学部卒業後、春風亭一朝に入門。YouTube 「春風亭一之輔チャンネル」ぜひご覧ください! アーカイブもいろいろあります

週刊朝日  2020年9月25日号

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