NTTドコモが発表した5G対応のスマートフォン(C)朝日新聞社
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金融庁が入る庁舎(C)朝日新聞社
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「もともと電波は国民の財産。(携帯電話会社は)その提供を受けてサービスや事業を展開している。大手3社はずっと9割の寡占状況で競争がはたらいていない」

【写真】焦点は携帯電話料金だけじゃない!新政権で地銀再編が進む?

 菅義偉氏は、自民党総裁選さなかの9月13日、テレビ各局に出演し、携帯電話料金の値下げの必要性を改めて訴えた。携帯電話会社が国に払う電波利用料を引き上げる可能性にまで言及した。

 携帯電話料金の値下げは、総務相時代から力を入れる“肝いり”の政策ともいっていいだろう。

「今回、菅氏が電波利用料の見直しに踏み込んだのは、料金が思うように下がらず、携帯電話会社に対して、より突っ込んだプレッシャーをかけたいのではないでしょうか。菅氏のいらだちが表れている」と通信業界に詳しいITライターの佐野正弘さんは解説した。

 菅氏は2018年夏に「日本の携帯電話の料金は高すぎる。4割下げられる余地がある」と発言。このため携帯各社は料金プランを見直し、総務省も電気通信事業法を改正した。19年10月からスマートフォンなどの端末代金と通信料金の体系を分け、端末代金の値引きの上限を2万円までとした。「2年縛り」の契約で顧客を囲ってきた携帯各社の手法を転換させることがねらいだ。

 しかし実際には、料金の値下げや顧客の乗り換えの動きは限定的だった。自社の通信網で事業展開する移動体通信事業者として、楽天が今年4月に本格参入したものの、NTTドコモ、ソフトバンク、KDDIの3強体制は揺るがない。首相となった菅氏は、持論をどう実行していくか。

 そもそも日本の携帯料金が「世界一高い」とした総務省の調査を疑問視するのは、調査会社ICT総研の齊藤和代表だ。

「国内外大手の最も基本的な料金の比較で日本の高さがクローズアップされましたが、実は割引施策の含め方で順位は左右されます。当社が日本と米英独仏韓6カ国の計25社のサービスを調べたところ、日本は接続率など通信の品質が高いわりに料金は『中位レベル』で、必ずしも高額とはいえないことがわかりました。最近、格安スマホが普及し、安い料金プランも増えています」

 菅氏が強調する「料金の値下げ」ばかりにとらわれるのも危うい。前出の佐野さんは「地方や遠隔地での高速通信のつながりやすさや自然災害への備えといった、サービスを維持するためのコストは利用者が毎月払う通信料で賄われています。値下げの際は料金の水準だけでなく、サービス内容や品質も含めて議論するべきです」と話す。

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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地銀再編に言及した菅氏。その意図は