「それについては心配ありません。災害時は、通帳やキャッシュカードがなくても、本人確認ができれば預金を引き出せるように、金融庁から各金融機関に通達があるからです。ただ、本人を証明するものは必要なので、これだけは準備しておいたほうがよいでしょう」(同)

 証明能力がある書類としては、運転免許証や健康保険証のコピーなどが挙げられる。また、被災者生活再建支援制度の支援金を受け取る場合にも、罹災証明書のほか、住民票、預金通帳の写しなどが必要になる。これらの書類は、あらかじめ複写して非常用持ち出し袋に入れておくか、離れた場所に住む家族や親戚、友人などに預けておくと安心だ。

 また、生活再建を図る上で、給付金や融資とともに活用したいのが猶予や減免措置だ。

「今回の新型コロナでも、感染により経済的被害を受けた方やその家族を対象に、税金、年金、保険料など、さまざまな猶予あるいは減免措置が講じられています。また、災害救助法が適用された災害では、『被災ローン減免制度』を申し出ることで、住宅ローン等についても減額、免除してもらえる可能性があります」(同)

 これらの支援制度や減免対象の情報は、内閣府作成の「被災者支援に関する各種制度の概要」という冊子に詳しくまとめられている。内閣府のサイトから、無料でPDFを閲覧、ダウンロードできるのでチェックしてみてほしい。

 中小企業庁の発表によると、1995年から2017年にかけて、ほとんどの都道府県において災害救助法が適用されており、大きな自然災害は全国各地で発生する可能性があるといえる。清水さんは、「日本に住む限り、ほとんどの人が災害とは無縁ではいられない」と語る。

「福祉制度や社会保障は特殊なものではなく、誰がいつ世話になるかわからないもの。自分が支援を受けることを前提にリテラシーを高めておくことが、実際に災害に直面したときに心強い支えになります」(同)

 しっかり備えよう。(ライター・澤田憲)

週刊朝日  2020年10月2日号