痔とは肛門の周囲にできる病気の総称で、「痔核(いぼ痔)」「裂肛(切れ痔)」「痔瘻(じろう)」がある。なかでも患者数が最多なのが痔核だ。直腸や肛門の静脈がうっ血してふくらんだ状態をいい、直腸と肛門のつなぎ目を境に「内痔核」と「外痔核」に分けられる。
内痔核の治療はながらく切除手術が主体だった。脱肛をともなうと薬物治療だけでは改善しないためだ。結紮(けっさつ)切除術以外の方法もいくつか開発されたが、その多くは結局、普及には至っていない。そんななか、にわかに脚光を浴びているのが、「結紮切除術とALTA療法の併用療法」だ。
結紮切除術は痔核の治療法として古くから実施されているもので、痔核を根元から切除する手術だ。痔核そのものを切除してしまうため根治性があるが、出血や痛みなどの合併症があり、決して楽な手術ではない。
また、切除する面積が広くなるほど、痛みが強くなり、入院が長引きやすい。ほかにも、手術痕がひきつれて肛門が狭まる術後狭窄(きょうさく)によって排便がしにくくなったり、後出血(医師による止血処理が必要になるほどの出血)などの後遺症のリスクも高まったりする。
一方、ALTA療法は10年ほど前から始まった治療で、内痔核硬化療法ともいう。痔核を硬く、小さくする作用のあるジオン(硫酸アルミニウムカリウムとタンニン酸からなる)という薬剤を注射する方法だ。注射するだけなので手技は簡単なうえ、有効性も高いので、急速に広まっている治療法だ。ただ、ALTA療法で用いる薬剤はとても強力で、効果が高い分、量や打ち方(痔核部位を4段階に分けて注射する方法を用いる)などを間違えると、肛門に潰瘍(かいよう)ができたり膿んだりするおそれがある。こうした問題を回避するため、現在は内痔核治療法研究会(http://zinjection.net/)が主催する講習会を受講した医師だけにこの治療をすることが認められている。
※週刊朝日 2013年1月25日号