粟国島が9月13日、多良間島が9月14日に解除になった。最後に渡ったのは、日程の関係で粟国島になった。
フェリーは揺れた。やっと着いた粟国島の小さな港を眺めながら、悩んでしまった。
今回の取材で、沖縄の離島のほとんどに渡った。宮古島と石垣島周辺の離島の開発は目覚ましかった。何軒もの高級リゾートホテルが海岸に建っていた。コロナ禍のなかで経営は苦しく、早い自粛解除を行政に働きかけたはずだ。そして残ってきたのは……。
粟国島はいい島だった。子供たちは皆、僕にあいさつを送ってくる。信号は小中学校前にひとつだけ。夜の暗さを大切にしようと街灯をやめてフットライトを道端につくる。昔ながらの沖縄の暮らしが残っている。リゾートホテルはない。観光客は多くない。
沖縄好きは、本土化が進む那覇を避け、離島に沖縄らしさを求める。
「どの島がいい?」
いまははっきりと答えることができる。渡航自粛の解除が遅かった島。コロナ禍はそんな線も引いてくれていた。
■下川裕治(しもかわ・ゆうじ)/1954年生まれ。アジアや沖縄を中心に著書多数。ネット配信の連載は「クリックディープ旅」(毎週)、「たそがれ色のオデッセイ」(週)、「沖縄の離島旅」(毎月)、「タビノート」(毎月)。