松下:オファーをいただいたときは、すっごくうれしかったですね。水橋さんが(スカーレットで)八郎という役を丁寧に繊細に描いてくださったおかげで、今の僕があると思っています。
今回はラブコメなんですが、登場人物それぞれの繊細な部分を描いてくださっていて、「水橋さんらしいな」と思いながら読んでいます。例えば、電話の相手が泣きそうな顔しているんですけど、「泣きそうなのかどうか、会わないとわかんないです」っていう僕のせりふがあるんです。その表現がまさに水橋さんだな、と。このドラマには、不器用で、遠回りして答えを導いていく人たちがたくさん出てくるんです。僕の青林という役もそうなんですけど、八郎もそういうタイプだったので、「懐かしいなあ~」という(笑)。
「スカーレット」では、主人公の夫・八郎役を演じた。今でも「八さん」と声を掛けられるほど、一気に知名度が上がったが、気負いはない。
松下:僕は今でも八さんのことが大好きです。こういう役に巡り合えたことは、俳優にとってすごく幸せだし、人生で何度も起きることではないと思うんですよ。八さんは僕の一部でもあり、時にライバルでもあるんですよね。彼の先に、僕自身が羽ばたいていかなければいけないので。
何かを越えていきたいという気持ちが、僕にとって走り続けるガソリンなんです。越えた先で自分がどうなっているのかを見てみたい。好奇心が旺盛なんですよね。手にしたことのないものに興味があるんです。すごく欲張りですし。だから、八さんという大きな存在がありがたいです。
画家である母の背中を見て育ち、美術系の高校に進学。美大に進んで絵に関わる仕事につくことに何の疑いも持たなかった。だが、高校3年生のある日、映画「天使にラブ・ソングを2」との出合いが人生を変えた。
松下:それまで人前で歌ったことは一度もなかったんですが、「あんなに歌えたら、気持ちいいだろうな」と。そう思った瞬間に、自分の中ですべてがひっくり返って、次の瞬間には壮大なビジョンと根拠のない自信であふれちゃって。デビューして、Mステに出て、武道館でライブして……と想像するのが楽しくて楽しくて。誰に何と言われようと動かないぞっていう気持ちになってしまったんです。