朝ドラ「スカーレット」でのブレークまで10年。舞台を中心にがむしゃらに積み上げてきた時間は、表現者としての喜びを探求する時間でもあった。AERA 2020年10月26日号から。
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インタビューは、当時出演中の舞台「ベイジルタウンの女神」(ケラリーノ・サンドロヴィッチ作・演出)の初日から2日後に行われた。初日の終幕後、割れんばかりの拍手の中、カーテンコールに立った。目に飛び込んできたのは観客の顔、顔。マスクで覆われていてもわかる、満足げな表情を見て、こみ上げるものが抑えられなかった。
松下洸平(以下、松下):「ああ、ここまでこれたんだ」と。新型コロナウイルスの影響で多くの作品が日の目を見ずになくなってしまったこともあり、僕は幸いにも舞台の仕事がなく、自分のライブが中止になってしまっただけでしたが、居場所を失ってしまった役者仲間もいて。その悲しみを感じていたので、初日を迎えた時は、すごく特別な気持ちになりました。舞台袖で共演者たちと「やっとこの日が来たね」「奇跡のようだね」と口々に話したのを覚えています。
外出自粛期間中は、朝ドラの共演者や仲のよい舞台の仲間たちとリモート飲みもしました。画面越しにでもコミュニケーションをとるだけで、心が満たされるんだなと感じて。僕、電話よりLINEやメール派なんですが、母とテレビ電話もしました。意外とぎこちなさはなく話せました(笑)。
■八さんは僕の一部
出演中のドラマ「#リモラブ~普通の恋は邪道~」は、コロナ禍を描く作品だ。
松下:マスクをしてお芝居をしていますが、表情から受け取る情報が少ないので、相手が笑っているのか、不機嫌なのかよくわからないんですよ。そうすると、目からの情報を求めるんですよね。僕も気持ちを伝えるのに、頼るものが目元しかないので、ついデフォルメしちゃうんです。怒ってるときに、思い切り眉間にしわを寄せたり(笑)。
本作は「スカーレット」に続く、水橋文美江脚本となる。