各地で行われる講習に参加しよう (c)朝日新聞社
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高齢者自転車運転の鉄則10カ条 (週刊朝日2020年10月30日号より)
高齢者自転車運転の鉄則10カ条 (週刊朝日2020年10月30日号より)

 うららかな日差しのもと、自転車で疾走する人が増えてきた。コロナ禍のため公共交通機関での移動を避けたい人には、もってこいの移動手段である。自動車運転免許を返納した高齢者にとっては貴重な足となるが、実は危険な落とし穴があった。安全に乗るためのすべを知ろう。

【高齢者が安全に自転車に乗るために知っておきたい10カ条はこちら】

 高齢者にとっては、自転車運転は大きなリスクを伴う。

 警察庁の発表によると、昨年の自転車乗用中に起きた事故での死亡者は433人。そのうち65歳以上の高齢者は299人もいて、全体の69%を占めるのだ。80歳以上だけでも、31%にあたる133人が亡くなっている。

 高齢者の自転車運転に関する研究を続ける元田良孝・岩手県立大学名誉教授が説明する。

「65歳を過ぎますと、いろんな部分で能力が落ちてきます。でも本人は信じたくないんですね。自転車なんて大丈夫だと考えたがるんです」

 元田氏が最初に高齢自転車運転者について調査を行ったのは、2011年。驚きの結果が出た。

 運転の自己評価を尋ねたところ、50代以下では「自信がある」と答えた人は39.2%、「少し自信がある」という人が44.3%だったのに対し、60代はそれぞれ46.1%、43.6%。70代以上となると57.2%、35.7%もいた。ちなみに「自信なし」と答えた人は50代以下で0.9%いたが、70代以上は0%!

「自動車の運転なら、その能力について家族が評価して話すでしょう。また高齢者講習などを通じて、自覚を持たせることもできます。でも自転車は免許がないだけに、本人に対して気づかせにくい。高齢者が自信を持つ傾向は変わりません」

 そう語る元田氏は、高齢者が苦手とする状況についても研究してきた。

「高齢者の死亡事故は、多くが日没時の前後1時間以内。照度がどんどん変わるのに、目がついていけないんです。その時間帯には乗らないように。もちろん、すっかり暗くなった夜間も避けましょう。どうしても夜間に乗らないといけないなら、自動車に早期に見つけてもらえるように尾灯をつけましょう」

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