日本は、原子力発電所で使われた核燃料を再び燃料として利用する核燃料サイクルの仕組みづくりを進めている。ニュースキャスターの辛坊治郎氏は、余りにも危険なこの仕組みより優れた方法があると提案する。
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核の「平和利用」を目指した科学者たちが最終目標にしていたのは、「核分裂」ではなく「核融合」だった。これが実現できれば、地球上のエネルギー問題は瞬時に解決する。使用するのは有限なウランではなく、地球上に最も普遍的に存在する水素だ。水素原子二つからヘリウム原子を作る。その過程で莫大なエネルギーが放出される。尽きることのないエネルギーの泉、それが核融合なのだ。
理論的には単純だし、兵器の世界では「水素爆弾」という形で実用化している。しかし、もちろん問題はある。
核分裂は原子炉の中でゆっくりと反応させることが技術的に可能になったがゆえに「平和利用」が進んだが、核融合は放出されるエネルギーが大きすぎて、連続して反応させる炉の設計自体が進んでいないのだ。それなら、というわけで、最近では宇宙空間に核融合炉を造り、そこから地球に強力な電磁波で電力を送る方法等が模索されている。
と、こうして縷々考えてくると、一つの事実に気付かされる。究極のエネルギー源が宇宙空間に設置した核融合炉だとするならば、それはすでに存在しているという事実だ。
言うまでもなく太陽だ。今、こうしている瞬間にも太陽では水素原子が融合してヘリウムが誕生し、その反応で作り出される凄まじいエネルギーが宇宙空間に放出されている。
宇宙空間に浮かぶ巨大な核融合炉が生み出す光、熱、風から我々の日常のエネルギーを取り出す、これこそが実はもっとも賢い「核の平和利用」なのではないのか。何もわざわざ、危険を冒して地上に太陽をつくる必要はないように思う。
(週刊朝日2013年3月15日号「甘辛ジャーナル」からの抜粋)
※週刊朝日 2013年3月15日号