伊苅裕二医師(左)、中村正人医師
伊苅裕二医師(左)、中村正人医師
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心筋梗塞データ (週刊朝日2020年12月25日号より)
心筋梗塞データ (週刊朝日2020年12月25日号より)

 心臓に酸素と血液を送る冠動脈。この血流が止まってしまうと狭心症や心筋梗塞になり、息切れや激しい痛みを引き起こす。日本人の死因第2位「心疾患」のひとつであり、突然死の原因にもなるこの病気は、冬場にも注意が必要だ。

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 狭心症や心筋梗塞は、加齢や生活習慣病などによる動脈硬化を放置しているとその結果発症する。

 冠動脈が狭くなるのが狭心症、冠動脈が完全に塞がり血流が途絶えて心筋が壊死してしまうのが心筋梗塞だ。

 東海大学病院循環器内科教授の伊苅裕二医師はこう話す。

「動脈硬化が加齢とともに進むのはある意味仕方のないことです。しかし、生活習慣に留意して、動脈硬化を少しでも遅らせることで心筋梗塞を防ぐことはできます」

 狭心症は、血管が狭くなり、歩いたり運動したりすると息苦しい、胸が痛いなどの症状を指す。

 この状態を放置すると、心筋梗塞を発症する。

「心筋梗塞への進行を防ぐためには、循環器内科などを受診して適切な検査と診断を受けることが重要です」(伊苅医師)

 一度心筋梗塞を発症した人は、生活習慣に留意しながら、二次予防としての薬物療法を継続する。再発すると、3年後の死亡率は約20%だ。経年とともに心機能が衰えると心不全に至る場合もある。

 冠動脈には、右冠動脈と左冠動脈がある。左冠動脈は左主幹部から左前下行枝と左回旋枝の2本の枝に分岐する。

 右冠動脈が障害されると、徐脈や命にかかわるような不整脈につながることがある。また左主幹部は、左前下行枝と左回旋枝の上流にあるため、詰まると急性心筋梗塞などの突然死に至る。

 左前下行枝が詰まると、心臓のポンプ機能が大きく低下する。また左回旋枝は、生死にかかわることは少ないが、血管の大きさに個人差があり、心機能低下や弁膜症につながる可能性がある。

 診断では、これらの血管に血液が行き渡らない「虚血」があるかどうかを調べ、判明させる。

 東邦大学医療センター大橋病院循環器内科教授の中村正人医師はこう話す。

「狭心症の症状があり、冠動脈のCT画像を見て、明らかに詰まっている場合は判断が容易ですが、画像だけではわからないような中等度狭窄の場合には、FFR(心筋血流予備量比)という血流量を調べる検査を、カテーテルによりおこないます。近年ではCTと組み合わせて、カテーテルを入れずに、血管の形状と血管内の状態、そして血流量を調べることのできるFFR‐CTという画像システムが登場しました」

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