ものが増えれば、必要な手間や空間も増える。不要なものがなくなれば、それだけ管理が楽になる。片付けが苦手な人ほどものを減らしたい。ものの減らし方のコツをプロに聞いた。「片付け」を特集したAERA 2020年12月28日-2021年1月4日合併号から。
【「断捨離」提唱者 やましたひでこさん自慢の食器棚はこちら】
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いまや片付けの代名詞ともなった「断捨離」の提唱者、やましたひでこさんがコロナ禍でもっとも危惧したのは、多くの人が“家の中の密”と向き合う事態だったという。
「ものであふれ、満員電車状態だった家に家族が戻ってきて長時間過ごせば、ストレスフルな状態になるのは当たり前です」
トランクルーム検索サイトなどを運営する「LIFULL SPACE」が今年9月に実施したアンケートによると、4人に1人が「コロナ前と比べて、自宅にモノが増えた」と回答。内訳は「日用品や食料品などのストック」が約6割、「子どもが使うもの」「家電」「書類」がそれぞれ約2割と続く。「パソコン・ディスプレイ」も1割以上おり、自粛やリモートワークの影響がうかがえる。
実際、やましたさんもコロナ禍でものが増えたという。その一つがクローゼットの洋服。自粛で体がなまったので、ヨガを再開しようとヨガウェアを購入。家にいて時間があるので、ネットショッピングでついついたくさんのウェアを買ってしまった。
とはいえ、断捨離を実践するやましたさんの自宅は、それでも普通の家に比べればずっとものが少ない。
「私自身、片付けは苦手ですぐに散らかしてしまう。ものが減れば、それに使う時間・空間・エネルギーも減る。片付けが苦手な人ほど、ものを減らしたほうがいいんです」
やましたさんが目指すものと空間の割合は2対8。ここまで徹底できずとも、5対5ぐらいを目指したいところだという。
取材の日はちょうど、クローゼットの断捨離の最中だった。これまでは講演会などでスーツやワンピースを着ていたが、オンラインになり着る機会がすっかり減った。そこでよそ行きの服は手放し、「断捨離塾」の塾生へのプレゼント企画を予定しているという。
「断捨離というと、『とにかくものを捨てること』と勘違いしている人もいますが、断捨離でもっとも重視するのは“ものの新陳代謝”。放っておけばものは増える一方ですし、時間の経過とともにものとの関係性も変わる。その見直しの連続なんです」
断捨離を決めた洋服は、まだ十分に着られそうなものばかり。だが、やましたさんはこれまで手放して後悔したものは「ない」と言い切る。見直しの基準は自分で作るものであり、断捨離を重ねるうちにわかるという。